幕が下りて
ロデリック・アレン警部をフューチャーしたミステリーシリーズの第14作。前半はアレン警部の妻トロイの視点でアンクレトン館の様子と事件の推移が描かれる。トロイは、館主ヘンリー卿の肖像画を描くために、館に滞在しているが、その間にさまざまな悪ふざけが起こり、それは肖像画にも及ぶ。激怒したヘンリー卿は、いたずら好きの孫娘の仕業と思い込み、彼の遺言に重大な変化が起こる。ところが、その後、ヘンリー卿は自室で死体となって発見される。ヘンリー卿の愛猫が事件解決の重要な手がかりになっているところなど、小粒のネタをピリッと効かせていて小気味よい。ヘンリー卿の殺害を企てた犯人の計画には、運命にもてあそばれるような箇所がいくつもあるが、そういった趣向は、シェークスピアの悲劇によく見られるもので、本作は「現代を舞台にした、シェークスピアの悲劇」とも言えるかもしれない。マーシュのベストとの呼び声も高い傑作!
幕が下りて/訳者あとがき
幕が下りて/訳者あとがき