プリンスを愛した夏

「ぼくが女性に不自由していると思っているのか?
なぜきみを選ぶ必要がある?」

ロンドンでパーティ・プランナーの助手として働くメリッサは、
2年ぶりに地中海の美しい国ザフィリンソスを訪れていた。
近々開かれる、カジミーロ国王が主催する舞踏会を手伝うためーー
そして、かつて束の間の情熱を分かち合った国王の子を
密かに産み育てている、と告げるために。
カジミーロには私の口からきちんと真実を話したい……。
国王への謁見を許されたメリッサはしかし、心を打ち砕かれた。
カジミーロは彼女のことなどまったく覚えていないばかりか、
耳を覆いたくなるような罵声を浴びせ、手酷く追い払ったのだ。