比較文学としての江戸漢詩

比較文学としての江戸漢詩
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【「あとがき」より】(抜粋)
 本書の関心は、漢詩文が我が国の文化におよぼした影響であり、あるいは逆に我が国の逸話を表現するときには中華の何になぞらえられたかである。第一部はその典型的な例として楠正成を詠んだ漢詩を取り上げ、また「正気歌」という作品が江戸漢詩にあたえた影響を明らかにした。
 第二部では、まず第二章で取り上げた室鳩巣に関連して、同時代の越中や紀州、播州明石など日本の各地で花開いた日本漢文学について検討をくわえた。さらに琉球の文化に漢詩文のあたえた影響についても明らかにした。
 第三部では藤原道長・蒙古襲来・戦国武将などにまつわる我が国の逸話を、江戸漢詩がいかに中華風にえがいたかを中心に論じた。
 第四部は、初めに第三部を受ける形で、西洋の逸話を詠んだ漢詩文を紹介した。さらに、江戸漢詩に関係する現代文学や、漢詩文の影響を受けた近代文学について論じた。