闇の用心棒【一】(第1巻)

闇の用心棒【一】(第1巻)
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今ごろになって、なぜ?

──本所相生町の長屋に年頃の娘・まゆみと住み、刀研ぎ師を営んでいた安田平兵衛は戦慄した。<十八夜>と記された紙片が彼の仕事場に投げ込まれたからだった。十八夜とは四五九(ル:じごく)屋、つまり地獄屋を意味する殺しの依頼である。平兵衛は逆八相に構え、瞬時に間合を詰める凄腕の剣客であったが、十年前、娘のために、殺し稼業から足を洗ったのであった。

どうやら、おれにしか出来ない仕事のようだ。平兵衛は直感したが、昔のように斬れる自信はない。だがまだ己の剣で、この世の悪を斬らねばならぬ、との思いもあった。老体に鞭打って鍛え直し、酒で武者震いを抑え、いざ修羅へ! 

殺(ル:や)るか殺られるか、一人の老剣客がふたたび地獄の鬼と化す!!