奴隷の抒情

奴隷の抒情
  • レーベル

  • 出版社澪標
  • ISBN9784860785864
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文芸評論を書き始めて五〇年以上になるが、いまだに飽きることがない。思考力が枯渇しない限り、詩や小説や、思想を読み解くことに終わりというものはない。とはいえ、力の源が、無尽ということはあり得ない。実際、昨年の十月から今年の一月にかけて、書下ろし稿を書いていたのだが、その間、何度も躓かずにはいられなかった。さまざまな災厄が、私の思考を遮ったのである。
序   泥にまみれた涙 --竹内英典『伝記』
第一章 汚名を着せられた言葉 --杉本真維子『皆神山』
第二章 公と私 --青木由弥子『伊東静雄 -戦時下の抒情』
第三賞 絶対的「無」としての「奴隷」--小池昌代『赤牛と質量』
第四章 生と死の循環 --岡本勝人『海への巡礼』
第五章 コロナ・パンデミックの抒情 --森川雅美『疫病譚』
第六章 重度の神と共に生きるということ --宮尾節子・佐藤幹夫『明日戦争が
    始まる「対話篇」』
第七章 母親からの疎外 --藤井貞和『物語論』
第八章 抽象的な普遍性への貢献 --大澤真幸『<世界史>の哲学 現代篇1』
第九章 詩語の不可能性 --田中さとみ『ノトーリアス グリン ピース』ほか
第十章 デタッチメントからアンタッチメントへ --村上春樹『アンダーグラウンド』
    から『騎士団長殺し』へ
第十一章 代わりに死んでくれる存在 --大江健三郎『さようなら、私の本よ!』
    カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』
 ほか