【POD】癌との日々を愛しむ 「澪標」「落日の光景」「日を愛しむ」「阿佐ヶ谷日記」

【POD】癌との日々を愛しむ 「澪標」「落日の光景」「日を愛しむ」「阿佐ヶ谷日記」
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作家の外村繁(とのむらしげる)は、、夫婦ともに癌にかかり、その癌と向き合う日常生活の中で、苦しみや不安、そして日常の中で見つける小さな喜びや希望、そして夫婦や家族の絆きずな》などを繊細な筆致で描いた一連の作品群を発表しています。その4作品を収録しました。

外村繁は、最初の妻である八木下とく子とは、帝大在学中の一九二四年春に、六本木のカフェーで知り合い、同棲生活を送っていましたが、その後とく子は、心臓病と戦中戦後の栄養失調によって一九四八年に死去しました。
一九五〇年に文部省職員の金子てい(貞子)と再婚しましたが、一九五七年に外村が、一九六〇年にていが相次いで癌と診断され、夫婦で闘病生活を送りました。外村は一九六一年七月に上顎癌で亡くなりましたが、ていもその四か月後、乳癌で死去しています。

その癌と向き合う日常生活の中での諸々の思いを描いた作品として、次の4作品を発表しています。
「澪標」(一九六〇年七月)、「落日の光景」(一九六〇年八月)、「日を愛《いと》しむ」(一九六一年一月)/阿佐ヶ谷日記(一九六一年一〇月)」の順番で発行されています。

ここでは、この発行順で収録しました。最初の「澪標」では、外村の性生活に関することが中心に描かれていますが、最初の妻とく子との死別、貞子との再婚、そして最後のほうで、夫婦が相次いで癌にかかったことが描かれています。それがイントロとなり、「落日の光景」「日を愛しむ」へと続きます。そこでは、そこでは冒頭に書いたような夫婦の闘病の中での日々の生活、諸々の想いが描かれています。
最後の四番目の「阿佐ヶ谷日記」は絶筆となった連載随筆で、最後の稿の末尾には、「つづく」と記されています(その記載があるのは連載の各稿の中でこれだけです)。連載を「中断」したものの、これが最後になるとの予感も抱きつつ、回復への一縷の希望も感じさせる三文字のように感じられます。