宮沢賢治文学における地学的想像力2

宮沢賢治文学における地学的想像力2
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空の桔梗のうすあかりには、/山どもがのっきのっきと黒く立つ。/大学士は寝たまゝそれを眺め、/又ひとりごとを言ひ出した。/「ははあ、あいつらは岩頸だな。岩頸だ、岩頸だ。相違ない。」(童話「楢ノ木大学士の野宿」より)
文学研究者の立場から宮沢賢治文学の地学的側面を追究した前著『宮沢賢治文学における地学的想像力ーー〈心象〉と〈現実〉の谷をわたる』(2011年刊)以後の著者の賢治研究の到達点。初期短歌から童話、晩年の文語詩に至る賢治の文学的営為と、火山が生み出す特異な地形〈岩頸〉(がんけい)の交響について、岩手の山と川の丹念な実地踏査に精神医学的視点からの共同研究の成果を加え考察する。賢治の得ていた地学的知見や、地質調査に従事した際の体験と作品生成の関係を検証する論考他併録。岩手の山々、採取岩石のカラー写真多数。
第1章 文語詩「岩頸列」岩頸表象〈南昌山山塊〉
地質学的調査/解離性意識変容体験/短歌No.240と文語詩「岩頸列」
第2章 初期短篇「沼森」岩頸表象〈岩手山麓滝沢方面〉
「沼森」の地学的考察/「沼森」への精神医学的接近
第3章 詩章「風景とオルゴール」岩頸表象〈豊沢川中流域〉
中流域の流紋岩質火山岩/分離した視点としての五間ヶ森という存在
第4章 童話「楢ノ木大学士の野宿」岩頸表象〈葛丸川上流域〉
細田論文の検証/流域地質調査/「楢ノ木大学士の野宿」の空間認識

補 論
1 「麓の引湯」新盛岡温泉について/2 宮沢賢治は、なぜ南昌山で水晶を採取できたのか/3 初期短篇「沼森」の背景
補 遺
1 〈種山ヶ原〉の岩石認識について/2 〈鬼越山〉をめぐって/3 「十六日」「泉ある家」の成立と〈剣舞〉の問題/4 聞き書き・宮沢賢治に関する橋本利平氏の証言三題